ダーツが秘める可能性。運動生理学、コオーディネーショントレーニング理論からダーツを解析!-荒木秀夫教授-

ダーツが秘める可能性。運動生理学、コオーディネーショントレーニング理論からダーツを解析!-荒木秀夫教授-

9月某日、東京大崎に位置する住友不動産大崎ガーデンタワーにおいて、株式会社MPandCと株式会社ダーツライブが主催となる『ダーツにおけるコオーディネーショントレーニングの講演会』が開催された。

当講演会に登壇したのは徳島大学名誉教授の『荒木秀夫 教授』とお笑い芸人で活躍する『こにわ(MC)』の2名。

荒木秀夫教授は運動学・運動生理学にもとづき、コオーディネーション運動をアカデミックにわかりやすく指導を行なっており、その内容はスポーツ分野にとどまらず、芸術、教育、社会学など幅広い分野に及ぶ。

新しい人間科学的なコオーディネーショントレーニング理論の開拓者だ。

 

当講演会では30年に渡る研究から考察された、脳神経の機能を論理的に取り組み、行動生理学的に発展させたコオーディネーショントレーニングの凄さを体験することを目的とし、エネルギースポーツの代表「サッカー」と、「将棋」や「麻雀」などの認知スポーツ、そしてその二つを繋ぐ生涯スポーツの「ダーツ」におけるコオーディネーショントレーニングの考え方が解説された。

荒木教授のコオーディネーショントレーニング実践。血圧を変化させる。

定年退化の影響により視力が0.1になった荒木教授。

物的証拠を定時するため、視力を変えるコオーディネーショントレーニングを用いて視力が0.1から1.2に回復したそうだ。

荒木教授の口からは信じられない発言が更に続き、血圧を自由自在に変化させることが可能と語る。

確かに血圧はたえず変化しており、緊張や興奮したとき、急激な温度変化、激しい運動、飲み過ぎ、睡眠不足などで高くなる可能性はある。例えば私生活であればゲームに熱中したとき、ライブやスポーツの応援で過度な興奮をしている時は血圧が変化する可能性はあるだろう。

しかし、荒木教授は椅子に座り、それを実現すると言った。

1回目に計測した際の数値は最高血圧が『166』、最低血圧が『77』。

荒木教授は着席したまま『それ以上に血圧を上げちゃえばいいんですね。』と発言し、目を瞑り、沈黙の状態で血圧を上げることに集中した。

目を瞑り、集中する荒木教授
目を瞑り、集中する荒木教授(左)

結果は最高血圧が『172』、最低血圧が『99』と見事に血圧を上昇させることに成功した。

血圧を上げることは状態を作り出すことで実現でき、極端なことを言えば自身が驚いてる(わっ!っと驚かされるような)状態になれば心拍は上がるとのこと。逆に心拍を下げるためには血管を広げることに意識すればでき、コオーディネーショントレーニングを用いれば誰にでも実践することが可能と語った。

 

参加者によるコオーディネーション運動体験

コオーディネーションを知らない人が体験するとどうだろう?

荒木教授は「どなたでもコオーディネーション運動をすることによりできるようになる」と言う。

そこで荒木教授は”体の硬さ”に自信がある人を募った。”体の硬さ”はいかに自分の脳が”体が硬い”と封じをかけ動きを制限しているかを実証する実験だ。

選定された参加者は前に立ち前屈を行い、見事なまでの”体の硬さ”を披露してみせた。その後コオーディネーション運動を経て体を柔らかくし、再度前屈に挑戦する。荒木教授は参加者に、数回の膝の曲げ伸ばしを促し荒木教授の指先を追いかけるようにと指示した。

するとどうだろう。先ほどとは打って変わって参加者の体がすっとつま先へ伸びていったのだ。

コオーディネーショントレーニングで言う「解禁」という作用を用いて身体を柔らかくしたパフォーマンスとなった。参加者本人も、「自分が身体が硬いのを忘れていた」と話す。

次に荒木教授が募ったのは「握力が70kgある人」だ。体の大きないかにも腕っ節が強そうな参加者が登壇した。荒木教授の握力は30kg未満という。

荒木教授と参加者が向かい合い、手の平を合わせ組み合った体勢となる。参加者に、その体勢から握力を使い荒木教授の手首を外らせるように握り込むよう指示を出す。想像通り、荒木教授は参加者の握力に圧され体勢を崩した。

次にコオーディネーション運動で、参加者の力を回避するという。参加者がぐっと力を入れたのもつかの間、荒木教授は回避するだけでなく、自身より大きく力のある参加者の体勢を崩すまでに至った。

参加者の力を躱す荒木教授
参加者の力を躱す荒木教授

参加者はこう話した。「力を入れにくい。力の通り道が止められているような感覚。」と。

正にその通りなのだ。荒木教授は、参加者から発せられた力を、筋肉・神経・姿勢・重心の組み合わせ(コオーディネイト)により躱している。

 

コオーディネーショントレーニングとは

コオーディネーショントレーニングを説明する前にまず、「コオーディネーション能力」とは何なのかを紐解いていこう。

コオーディネーション能力は誰もが持っているが、生涯に渡り使わないことが多いと語る。成果を出すためにはまず、信じることが重要。「どうせ」と疑えば”不誘導の原理”で潜在的な能力を脳が抑えつけてしまう。信じるのも疑うのも行き着くところは「脳」なのだ。

スポーツには「とにかく動く」「とにかく考える」その両方をつなぐ「感性の力」の3つの要素がある。3つの要素を言い換えると「身のこなし(Boring)」「知性(Intelligent)」「感性(Emotion)」となり、全ての要素に関わるのが脳である。

脳は「運動」「体性感覚」「言語」「視覚」など様々な役割があり、それぞれの役割がいかに密接に繋がり一致団結するかで脳の能力の高さが変わってくるという。

一方で脳細胞はおよそ20歳までに大幅に減少することから、脳細胞の数ではなく”システム”によって脳機能が発達していくことがわかる。そして、それぞれの役割を組み合わせていくのが”コオーディネーション能力”なのだ。

コオーディネーション能力を発達させていくには、いわゆる”脳トレ”や”課題”をやるのではなく、もっとも影響が大きいのが「身体性※1(Embodiment)」というのだ。簡単に言うと”身体そのものが大事”なのだとか。例えば数学の数式を解くのにも、脳だけでなく身体そのものが関係しているという。
※1:身体性(しんたいせい、Embodiment)とは、身体が持つ性質を指す。 分野ごとに様々な定義がある。(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BA%AB%E4%BD%93%E6%80%A7)

突然だが、1週間前の夕食のメニューを問う。

思い出す作業をしている時どのような動きをしていたか振り返ってみよう。視線を外して上を向いたり、手を顔に当てたり腕を組んだりしたのではないだろうか。

身体全体を一つの回路とみなし、脳の刺激だけではなく身体性に”身体活動”(上記で言う、上を向くや腕を組むことなど)を加えることにより潜在的能力を高め、学習能力を引き出すことができるのだ。
この”身体活動”に「コオーディネーション運動」を活用する。コオーディネーション運動すなわちコオーディネーショントレーニングである。

コオーディネーショントレーニングとは何なのか、荒木教授はこう語る。
「できたかできないかではなく、やろうとすることにより脳と心と身体に刺激が入って、潜在能力を引き出すことを狙ったトレーニング」だと。誰もが本当はいろんな能力があるのにも関わらず、自らが制限してしまう。頑張ればできるよと言ってできるものではなく、身体に刺激を与えることにより脳がもともとある自分の能力を思い出すのだ。

コオーディネーション能力を紐解く荒木教授

 

荒木教授はコオーディネーショントレーニングと身体性の関わりについて更に掘り下げて説明を加えた。

人間の身体性は「体性感覚・運動覚」→「視覚・聴覚・時空感覚など」→「言語覚・思考」の順に発達していく。

30字程度の日本語の文章(言語覚)を1度聞いただけですぐに覚えられるのは、言語覚の前にある聴覚などの身体性があるからだ。これを、同じ文字数でも聞いたことのない言葉だと覚えられない。言うまでもなく言語覚の前にある聴覚などが存在していないからである。知性が活かせるのは感性が伴っているからであり、感性なき知性は忘れるし応用できない。

「体性感覚・運動覚」→「視覚・聴覚・時空感覚など」→「言語覚・思考」の全体の繋がりはとても大切で、これらが発達するのは”豊かな環境の効果”であると語る。

脳の活性化には環境に変化を与えることが重要であり、コオーディネーショントレーニングは「体性感覚・運動覚」→「視覚・聴覚・時空感覚など」→「言語覚・思考」の考え方がベースになっている。要はコオーディネーショントレーニングは”身体性”に基づいているということだ。

 

コオーディネーションにおけるダーツの可能性

スポーツは”フィジカルスポーツ”と”マインドスポーツ”と2分野に分けられる。

フィジカルスポーツは身体運動を主とするスポーツであり、代表的には「サッカー」や「バスケット」などがある。マインドスポーツは”頭脳スポーツ”とも呼ばれ、思考能力を用いて競う「チェス」や「囲碁」などが代表的だ。

では「ダーツ」はどちらの分野になるだろうか?荒木教授は、ダーツが2分野の境目にあるスポーツだと話した。

コオーディネーションにおけるダーツの可能性

スポーツの観点だけではなく、コオーディネーション能力の構造上でもダーツは均等性が高いスポーツであると言う。
コオーディネーション能力の構造は複雑であるが、大きく分けて4つに分類することができる。

平衡(へいこう)能力:精神と身体を支える基盤
定位分化能力:状況をつかんで、的確に対応する
反応リズム能力:時間と空間をつかむ
運動結合変換能力:創造的な動きをつくり、自由に変える

今後データを取り調べることができれば”教育”の分野でダーツが使える可能性があると話す。

 

ダーツにおけるコオーディネーショントレーニング

初めてダーツをやった人の頭の意識は”的(ボード)”の存在が大半を占めている。ダーツが上達するにつれて”的”への意識が小さくなり、戦略を考えたり動きの見直しをしたりと「対敵戦略・知的戦略・操作戦略」の意識が大きくなってくる。

この「”的”の存在が大半を占める」から「対敵戦略・知的戦略・操作戦略」に変わるプロセスはコオーディネーションにおける環境操作といって発育発達に伴う運動制御・認知と重なるのだ。もっと噛み砕いて言えば、脳や身体の全展の発達、運動を調整する物事を記憶し理解するプロセスがダーツには備わっている。もちろんダーツに関わらず多くのスポーツにも同じことが言えるが、ダーツは全ての要素の均衡が非常にとれているのが特徴となる。

コオーディネーションは体幹から末梢への繰り返しと荒木教授は話す。

人の運動能力の発達は、身体の中心から末端へと徐々に発達していく。そしてまた末端から身体の中心へと発達を繰り返す。スポーツも同様に身体の中心から末端へ、末端から身体の中心への行き来を繰り返すことにより、柔軟性をもち身体を固めないようにすることが大切だ。

しかし、中には身体の中心から末端へいくと固まって戻れない人がいるという。戻れなくなると、今までできていたことができなくなる。

これをダーツに置き換えて考えてみよう。

スタンスからセットアップして腕を振りリリースをしていく。正に身体の中心から末端への動きそのものだ。そして、身体の中心から末端への連動ができず固まってしまった現象をスポーツ用語でいう「イップス」と呼ぶ。

この「イップス」については、様々な論争がされている。中には症例として認められない場合もあるらしい。イップスのメカニズムについての論争は絶えないが、コオーディネーションの分野に置き換えると、身体の中心と末端への連動ができなくなることが「イップス」の原因の1つと考えられるという。

自覚症状でおかしいと感じたときに、脳の意識はより”末端”へと集中するそうだ。自分の頭では理解していても、脳がそれを受け付けなくなる。荒木教授は、「脳」と「身体」が完全に切り離されている状態と話す。

 

重度のイップスダーツプレイヤーがコオーディネーショントレーニングを体験

当講演会では重度のイップスを抱えたダーツプレイヤー2名を招き、実際にコオーディネーショントレーニングを体験してもらった。

イップスを抱えたダーツプレイヤーはお互いに投げる時やリラックスしている状態でもイップスの症状が出ると話す。

1人目は半年前からイップスの症状が現れ、実際に投げているところを見ると、セットアップした後、何度もテイクバックを繰り返し腕が出ないように見えた。

2人目は二年以上も前からイップスの症状に悩まされ、投げる度に体が前に出てしまい、ダーツを投げる前に左足はスローラインより大きく前に出てしまっていた。

その後、荒木教授の指示の基、2名のダーツプレイヤーを交えたコオーディネーショントレーニングが行われたが、苦手とする動作が露骨に現れている様に見えた。

コオーディネーショントレーニングを行う荒木教授と参加者
コオーディネーショントレーニングを行う荒木教授と参加者

コオーディネーショントレーニング終えた後、ダーツ台に向かい投げる2名はコオーディネーショントレーニングを行い、変わったことをあまり体感できなかったが、自身にとって苦手とする”動き”の気づきがあったと話した。

 

コオーディネーショントレーニングには「基礎的なトレーニング」、「目的特化型のトレーニング」、「スポーツ・音楽のためのトレーニング」、「機能回復のためのトレーニング」、「コミュニケーションのためのトレーニング」、「認知思考のトレーニング」のベースとなるトレーニングが存在する。

荒木教授は運動が不得意、苦手の方でもしっかりとトレーニングに励むことで必ず成果が出ると話した。

コオーディネーションは「能力の根は一つ」。

能力の根に確実に働きかける。

赤ちゃんはまさに根から始まっている、何歳になっても根からトレーニングを行うことが大切と語った。

ダーツに教育が、教育にダーツが用いられる日も近いのかもしれない。

 

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